最近読んだ本の感想など
・永井均 『子どものための哲学対話』(講談社文庫)
「ぼく」と「ペネトレ」(見透す、貫く等の意味)という名の猫との短い40の対話からなり、それぞれの対話ごとに口絵や漫画が添えられている。タイトルどおり内容は「生きる目的とは何か」、「善と悪とはなにか」などのテーマについて、かなり噛み砕いた形式で書かれており、読み物としても十分に面白い(通読するのにおそらく3時間ほどしかかからない)。ただし噛み砕かれているからといって、内容が決して難しくないわけではないし、ここで提示されるすべての問題について「自分自身の」で考えるとすれば、おそらく一生の大半を費やさねばならない(それでも足りない?)のではないかと思う。まあ、「なんとなく」「楽しく遊びながら」色々と考えてみることが好きな人にはお勧めの本。ちなみに私はこの著者の本を読むのが大好きである。
・加藤向武『現代倫理学入門』(講談社学芸文庫)
永井の本が「自分で考えるための」本なら、こちらは制度的な諸問題と関連するよりアカデミックな倫理学についての入門書。現代の法制度や倫理観の土台となっている功利主義について、その難点を指摘しつつ色々な問題に関する思考の端緒となる話題を提起している(つまりこの本では「問題」はだされても「答え」はあまり載っていない)。しかし前掲の永井の本と読み比べると、両者の思考方法の対照性が見て取れて面白い。ちなみにより根源的な問いを提起しているのは永井のほうであると私には思われる。やや読みにくいところや難解なところもあるが、1章ごとの内容も短くわりと気軽に読めてよい。
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